262の法則から考える―全員を満足させようとしない組織マネジメント

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ある野球チームの話

とある野球チームに、熱血監督がいました。「全員をレギュラーにしたい🔥」という思いで、練習メニューを工夫し、個別指導に励みました。

でも不思議なことに、どれだけ練習しても「試合で活躍する選手」「そこそこ出番がある選手」「なかなか出場機会が回ってこない選手」という3つのグループが自然とできてしまうんです。

ある日、思い切って下位グループの選手を入れ替えました。新メンバーを加えて心機一転。ところが半年後、また同じような分布になっていました。

これが「262の法則」です。

262の法則とは

組織やグループには自然と「上位2割」「中間6割」「下位2割」の分布が生まれる、という経験則です。

人事労務の相談で「全員をやる気にさせたい」「モチベーションが低い社員をどうにかしたい」というお話をよく伺います。その気持ち、本当によくわかります。

でも、この262の法則を知っていると、ちょっと肩の力が抜けるかもしれません。

分布は自然に生まれる

野球チームの監督が気づいたように、どんなに工夫しても組織には濃淡が生まれます。

面白いのは、下位2割を入れ替えても、また新たな2割が下位になるという現象です。これは下位の人に問題があるわけじゃなくて、相対的な位置関係として必ずそういう分布になる、ということなんです。

ビジネスでは「パレートの法則」もありますよね。売上の8割は2割の顧客が生み出す、みたいな。262の法則も似たような考え方です。

つまり「全員を同じように」というのは、実は無理な目標なのかもしれません。

労務管理で考えてみると

上位2割は確かに貴重な戦力です。でも、その2割だけに頼りすぎると、彼らが辞めたときに困ります。「できる人に仕事が集中する」のは、よくある話です。

中間6割が実は一番大事だったりします。この層が組織の安定性を支えています。日々の業務を着実にこなしてくれる人たち。ここが気持ちよく働けているかどうかが、組織全体の雰囲気を左右します。

下位2割は、すぐに「問題社員」と決めつけない方がいいかもしれません。今の配置が合っていないだけかも。営業は苦手でもバックオフィスなら活躍できる、なんてこともあります。

大切な視点?

人事労務管理において、「全員を公平に」というご要望をよくいただきます。公平性は大事です。でも「全員一律に同じように」というのは、実は無理があります。

上位・中間・下位、それぞれに合った関わり方を考える方が現実的です。

モチベーション施策も、限られた予算の中でどこに力を入れるか。全員に均等に配るより、中間層が安心して働ける環境をつくる方が、結果的に組織全体が良くなることが多いんです。

それと、時には「諦める」ことも必要です。全員を満足させることはできない。その現実を受け入れて、どこに力を注ぐか選ぶ。それも経営判断です。

完璧な組織なんてありません。全員がやる気満々で全員が高パフォーマンス、なんて会社は現実にはないだろうと思います。

262の法則が教えてくれるのは「分布が生まれるのは自然なこと」ということ。それを前提に、限られたリソースをどう使うか考える。それが現実的な組織づくりだと思います。

全員を満足させなくていい。その代わり、大事なところはしっかり見る。そんなバランス感覚を持ち、改めて組織を眺めてみてはいかがでしょうか。

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