「伝える」ことの難しさ
職場で、こんな経験はありませんか?
・本当は断りたいのに、つい「はい、やります」と引き受けてしまう…😣
・良かれと思って伝えたアドバイスが、後輩にうまく伝わらない…😢
・部下へのフィードバックで、どんな言葉を選べば良いのか悩んでしまう…😟
多様な価値観を持つメンバーが協働する現代の職場では、お互いを尊重し、建設的な対話を行うスキルがこれまで以上に重要になっています。そこで注目されているのが「アサーティブコミュニケーション」です。
アサーティブコミュニケーションとは?
アサーティブコミュニケーションとは、自分と相手を共に尊重し、自分の意見を正直に、かつ相手に配慮して伝える方法のことです。「自分も相手も大切にする」姿勢。それは、単なる「上手な話し方」のテクニックではなく、「誠実で対等な」人間関係を築くための姿勢そのものなのです。
あなたのコミュニケーションタイプは?
私たちのコミュニケーションには、大きく4つのタイプがあります。
まず「アグレッシブ(攻撃的)」タイプ。「自分はOK、相手はNG」な態度。
自分の意見を一方的に押し付け、「なんでできないの?」「常識でしょ」といった言葉を使いがちです。一時的に自分の主張が通ることもありますが、相手との溝が深まり、結果的に孤立してしまいます。
次に「ノンアサーティブ(受動的)」タイプ。「自分はNG、相手はOK」な態度。
自分の意見を飲み込み、相手に合わせすぎてしまいます。「すみません」「私がやります」が口癖で、ストレスが溜まり、相手に軽く見られがちになってしまいます。
そして「作為的・作為的攻撃型(間接的攻撃)」タイプ。「自分はNG、相手もNG(不信)」な態度。
不満を間接的に表現し、「別にいいけど…」「どうせ私なんて…」といった皮肉や無視で相手を攻撃します。信頼関係が築けず、誰も得をしない結果になります。
最後が「アサーティブ(誠実・対等)」タイプ。「自分も相手もOK」な態度。
自分の意見を正直に、相手に配慮して伝えます。「私はこう思う」「力を貸してほしい」といった言葉で、信頼関係が深まり、お互いに納得できる結果を生み出します。
明日から使える「DESC法」
アサーティブなコミュニケーションを実践するための具体的なフレームワークが「DESC法」です。4つのステップで、率直かつ建設的に意見を伝えることができます。
■D(Describe:描写する)は、起きている状況や相手の行動を、評価を交えず客観的な事実として伝えるステップです。
■E(Express:表現する)では、その状況に対する自分の気持ちや考えを「私」を主語にして、誠実に伝えます。
■S(Suggest:提案する)で、相手にしてほしい行動を、具体的かつ現実的な選択肢として提案・お願いします。
■C(Choose:選択する)で、提案を受け入れた場合のポジティブな結果や、もし難しい場合の代替案を伝えます。
実践例:依頼を断る場面
たとえば、急な依頼を受けたとき。「無理です」と即座に拒絶したり、他の業務で手一杯なのに引き受けてしまうことは、良いコミュニケーションとは言えません。
DESC法を使えば、こんな風に伝えられます。
まずクッション言葉から始めます。「ご依頼ありがとうございます」😊
D(描写する): 「急なご依頼ですね」😯
E(表現する): 「お力になりたいのですが、今抱えている業務で手一杯でして…」😢
S(提案する): 「来週の火曜日までお待ちいただけるのであれば、対応可能です」🫡
C(選択する): 「いかがでしょうか?」🤔
相手の意見を尊重しながら、自分の状況もしっかりと伝えることができます。
まずは「私はこう思う」から始めてみよう
このスキルは、経験や役職に関わらず誰でも身につけられます。
チームの対話を円滑にし、より良い職場を築くための第一歩として、まずは身近な相手との肯定的な会話で「私はこう思う」と主語を「私」にして話すことから始めてみましょう。
そして、伝える前の大前提として大切なのは、まず相手の話に耳を傾ける「聴く姿勢」です。
また、「よろしければ」「恐れ入りますが」といったクッション言葉を添えるだけで、対話がぐっとスムーズになります。
自分も相手も大切にする。その姿勢が、信頼関係を築き、より良い職場環境を生み出していくのです。

